この日はいつものホテルが取れなくて
初めて行くホテルだった。
私たちはいつもエレベーターの中で別れる。
ドアが閉まって、開くまでは恋人。
でもそのドアが開いた瞬間からは他人。
別々の方向へと歩く。
駅の真上にあったそのホテルから
地下道に降りた。
地下鉄まで歩く途中で
別の入り口から来たカズをまた見つけた。
私は嬉しくてとっさに側に歩み寄る。
まるで構ってほしい子犬みたい。
カズは電話をしながら足早に歩いている。
仕事の話のようだ。
背の高いカズ。
ラグビーで鍛えられたというその体はとても男らしく
広い肩幅、厚みのある胸。
申し分のない、いい男。
私はあなたのカラダが大好きだ。
夜寝る前にメールを送ってみた。
「今日、帰りに地下道でまた会ったね。
カズ電話してたけどー」
するとカズ
「いや、全く気付かなかった。
だって人がたくさんいたでしょ」
気付かなかった?
ほとんど横にいたよね?
どうせ
ウソなんじゃないの・・・・
なんて思ってしまう。