20年目の情事

もう20年間W不倫生活をしています。不安がないと言えば嘘になる。でも、一人で生きていくには辛すぎる。

彼からのメール

震える手でメールを開いてみる。

一気にたくさんの文字が目に入る。

とても長いメール。



ミカ、本当にごめん。

君を傷付けてしまったね。

本当にごめんなさい。

僕はもう、恋はしないでおこうと思う。

君にとっては短かったかもしれないけど、

僕にとっては何年にも感じる。

本当に楽しかった。


〜中略〜


君のことは嫌いじゃないけど、いい区切りじゃないかな・・・って思って。

一方的だったよね、ごめんなさい。


君がよく言ってたよね、

縁があればまた会える。って


今はお互いの為に、離れたほうがいいんじゃないか、って思ったんだ。

そうは思ってくれないかな?


君のこと、嫌いになりたくないから

いつものミカちゃんでいてよ。



君にとって、

今年が良い年になりますように祈ってる。








良い年?


どの口で良い年を語る??


新年早々、私を奈落の底に突き落としたのはあんたでしょがっ!!!


あまりにも呆れ返るバカなメール。



ん?



本気で別れようと思ってる人間が、

わざわざ何度もメール送ってくる?


・・・こいつ、別れる気ないんじゃないの??


と、思えてきた。

冬眠する

その後はもう、

起きているのか寝ているのかさえわからないような精神状態に。


携帯は放置した。

もう見るのをやめた。

彼からのメールはもう来ない。

これで終わったんだと心に言い聞かせる。


2019年 元日

どんな時だって朝は変わりなくやってくる。

用意しておいたお節料理を並べ、

お雑煮の用意をする。


午後は毎年行く地元の神社ヘ初詣。


もう、それだけで精一杯。

朦朧とする意識の中、なんとか動く。

年末からほとんど寝てない私。

夢遊病者のようにフラフラとベッドに倒れこむ。

そこからはもう、

起きることもできず、

食べることもままならず、

冬眠してるクマのようにベッドの中でただ丸くなる。


もう、何もできず、ただ、眠り続ける。


つい先日まで、

何をしていても、

どこにいても、

心がいつもあったかくて、

離れていても彼を思うだけで幸せで包まれた。


私の大切な人・・・


なのに、なのに

なんで今、いなくなるの

なんで今、私を捨てたの


もう、

涙も出ないほど心が枯れはてて、

私は脱け殻になってしまって、

もう、この先、どうやって生きていけばいいの?


カズ、私の大好きな人・・・


家族は新年早々に寝込んでいる私を風邪でもひいたんかな、

くらいにしか思ってない様子。


これだけ長い時間携帯をチェックしなかったのなんて初めてだな・・・

そんなことも考えられるようになった正月3日の夕方。

友人が緊急入院したと連絡があった。


あれ以来、全く見てなかった携帯を開く。

もう一度だけ、見てみよう・・・


カズと2人だけのメールを開く。



えっっ?


メールが入ってる?


カズから???


私が最後に送ったメールの1時間程あとに送られてきてる。


返事??


うそ・・・

なんで・・・・

サヨナラの覚悟

クリスマス

娘と2人でNYにいた。

ロックフェラーセンターのクリスマスツリー。夕方にもなると人が多過ぎて近づくことも困難だけどとても綺麗。


トランプタワー。実際にトランプさんが住んでいるのがNY五番街のここ。

表には機関銃を構えた警官が数名立っている。

この脅しに屈することなく奥のスタバにたどり着けた人はさぞ勇敢だ。

ちなみに、入ってもいいらしいがほぼ誰も入ろうとしない。


我が家は自由な家で、旦那は毎年息子を連れてハワイにゴルフに出かける。

だから私は娘と2人で女子旅が定番。

いつもはアジア圏をサクッと楽しんでいるが、今回は珍しく14時間も離れた東海岸まで来ていた。


最後のデートの2日後には出国していた私。

多少の音信不通くらいにはなる。

こっちに着いてから送ったメールが日本の夜中3時だったらしく、何で?と聞かれ、いや、今ニューヨークだし。と言ったのにまずイラッとしたらしく、

次に帰る日にちを知らせずに勝手に帰って来たと、またもイラッとしたと言う。


そう、私が雑な人だというのは認めます。

でもよ、どこまで事細かに日々の生活を伝えればいいの?

カズだって、1日1通しかメールくれないよね?

もっとたくさん話したいからライン教えてって言った私に、いや、ラインしてないし。と嘘ついて教えてくれなかったし(←普通に音鳴ってたからすぐバレた)

必要最低限の連絡にしろ的な体制を作ったのはあんたのほうじゃないの!?

調子いいこと言わないで!帰国の日を教えたら、迎えにでも来てくれるつもりだった?


と、頭の中グルグルしながら呪いのメールを何度も読み返す。


もう、思いつく限りの脅しと悪口を書く私。

何度も何十回も読み返すうちに気持ちが少し落ち着いてきた。


どんなに怒ったって、悲しんだって、終わりにすると言われた以上、もうその先はない。

諦めるしかない。


何度もそのメールを読み返すうちに少し現実世界に戻ってきた。


そして最後に付け加えた。



な〜んてね。ウソだよ。

カズ、元気でね。


じゃあね♪



と、壊れそうな心で精一杯明るくメールを閉じてみた。


もう、ボロボロで、文字も読めない

何も見えない。


これで最後だと必死に自分に言い聞かせて

メールを送信した。